情報理工CS専攻大学院入試体験記
はじめに
情報理工学系研究科の大学院入試が2025年8月に行われました。筆者は計数工学科システム情報工学コース所属であり、順当に上がるならばその専攻を受験するのですが、思うところがあったので専攻を変えコンピュータ科学専攻を受験し、無事合格しましたのでその体験記です。
時系列(2026年度)
3月 TOEFLの試験
情報理工学系研究科の入試では、現地での英語科目の受験が必要ない代わりに、TOEFL iBTの試験結果を研究科に送る必要があります。出願締め切りが6月で、その時までに成績が届いていればよいので、大体みんな4月までに受験しているイメージ。
TOEFL iBTの受験料はとても高額で、ドル円レートにもよりますが1回の受験で大体4万円程度(今は減額されて3万円程度)かかります。試験は円高になっているとき、または割引になっているときを見計らって受けるのが良いでしょう。
受ける科目はリスニング、リーディング、スピーキング、ライティングの4科目で、各30点×4科目で計120点です。目標点数としては80点取れていれば安心くらいだと聞いています。ただ、足切りにしか使われないという噂もあるし、50点台で受かったという話も聞いたので、もう少し低くても良いかも(過信は禁物!高ければ高いほどいいです)
現地受験とオンライン受験がありますが、オンライン受験は部屋がきれいでないと難しいようだったので現地受験を選びました(目の前に本棚が……)。ヘッドホンの防音性能が悪いので、周りのスピーキングに自分のリスニングが被ってしまうと集中が途切れます。できるだけ早い時間に会場入りし、逆に自分の喋りを周りのリスニングにぶつけるとよいでしょう。
筆者が受験した時はバイトの繁忙期に重なっていたので、積みあがった時給が受験料を超えたことに虚しさを感じつつ、頼むから勉強させてくれと思いながら働いていた記憶があります。試験会場から出てスマホを見たら6,7件メンション通知が来ていて本当に嫌な気持ちになりました。
勉強法としては、リスニングとリーディングは大陸で提供されている過去問を使ってチューニング、ライティングはChatGPTに問題を作らせて壁打ち、スピーキングは回答時のキーワードをいくつか 考える / メモする ことだけできるようにしておき、あとは自分を信じました。
6月 出願締め切り
五月祭の2週間後ですね。計数工学科の場合は実験第二の最終レポート締切にもかぶります。時間が足りない……
コンピュータ科学専攻においては、研究計画書の提出が求められます。これは、修士の期間において自分が何の研究をしたいかを具体的に記述するものです。
聞いた話では、研究計画書は自分が研究について理解している人間だということを示すものだそうです。つまり、背景と課題と手法と結果評価、社会的な意義についてまとめたうえで、適切な絵図なども入れ込みつつ、きちんと章立てして論理的な文章を書ければよいわけです。研究計画書で記載した研究内容は、修士でまず引き継がないので嘘八百でよいです(多分。場所によって違うかもなので聞いた方が良い)。
システム情報工学専攻では、志望理由書を書くそうです。こちらは自分がなぜその分野に興味を持ったかなどを書けばよいので、作文能力が求められます。
書類に不備があった場合、ほぼ間違いなく出願は無効になるので注意しましょう。ただ、最悪の場合冬入試もあるので間違えても気を落とさないでください。
研究室選びの基準について
事前に研究室に訪問してから申し込むことを強く勧めます。入ってみたら教授の様子がおかしい、学生の目が死んでいる、空気感が合わない、などは起こりうることのほんの一部です(相性次第では計数でも起こりえます)。遠慮せず聞きたいことを聞くとよいでしょう。それで変な空気になるようなら、その研究室はあなたに向いていません。また、計数の場合は実験第二での研究室の評判を集めるのもありです。
ほかに研究室を選ぶ指標として勧められるのは、その研究室の分野の論文を調べるのが苦にならないかどうかです(筆者は脳科学が一番苦にならなかったのにそちらには進みませんでしたが)。
8月 試験本番
19日(試験1日目)
共通数学の試験でした。2025年度の問題は
- 線形代数。高校数学の美しい物語で見た問題が出た気がする
- 微分方程式(リッカチ型とか。具体的には忘却……)
- 確率論。ランダムウォークの分散が出たことは覚えている
の3問でした。試験時間は分、会場は法文学部1号館の講堂。入る場所がわからず、留学生と2人で迷いながら2号館の受付の方に試験会場を聞きました。情報を載せる掲示板は謎の小さな板でなく法文館のきちんとした掲示板にしてくれません?
ストップウォッチを持ち込み、懐中時計だと主張する作戦を大学入試から続けているのですが、この度初めて規約ではじかれました。無念(部屋の時計を見て何とかしました)。
それぞれの解き方としては、
- 大体解いたつもりだが証明はおそらく不正確。
- 微分方程式はたいてい解けたと思うが、最後の数値計算は投げた
- ここまでの問題が予想より難しく動揺した。何とか持ち直したが難易度的には解けたはずの4番, 5番あたりを落としてしまった
2問目の微分方程式は数学1Dをとっている工学部民に有利すぎでは?
対策は、確率は競技プログラミングでできると信じて済ませ、微分方程式は解法をいくつか暗記しておく程度で終わらせたので、ほぼ線形代数に集中しました。過去問を解いた感じ知識に課題があり解けない場合が多かったので、高校数学の美しい物語を読んでいました。
20日(試験2日目)
専門科目の試験を受けました。2025年度の問題は
- オートマトン
- オペレーティングシステム(キャッシュ周辺じゃなかったっけ)
- ハードウェア構成(CMOSの回路図を書いた記憶がある)
- 離散数学(ソートアルゴリズムだったような気が……?)
の4問でした。制限時間は分、会場は工学部8号館の83教室。今度は迷いませんでした。
前日の反省を生かし、家にあった置物の時計を引っこ抜いて持って行ったのですが、時刻調整ダイアルを回して時針が回ったときには絶望しました。ただ分針とは回転が連動しなかったので、時針と分針の間の角度を変数とみなすことで無事時刻の解読に成功。半分受かったようなものです。
それぞれの解き方としては、
- 大体過去問通り。プッシュダウンオートマトンに帰着させる回答は詭弁のような気がしたが、それ以外に思いつかなかった
- 単純な計算ミスをしないように
- 解く
- 日本語で正確な解答を書くのが難しい
勉強方法としては、まず4Sの間に自習が不可能な科目(離散数学、言語処理系論)を履修しておき、残りは過去問を解いて不足分を埋める方法を採用しました。結果、オートマトン関連、ハードウェア構成周辺に課題があることが分かったので、理情の友人に教えを請いました。
自分一人で解答なしに学習することには限界があるので、聞ける人がいる場合は頼ったほうが良いと思います。実際、学科独自の作法がないと解きづらい問題もあります。
試験終了後、数理コースの人たちが6号館屋上でスイカ割をしていたので合流しスイカを食べて帰りました。システムの人たちは試験開始が早かったため全員帰宅済み……
27日(試験3日目)
もはや余興のようなものですが、口述試験があります。存在を忘れて落ちるケースが多そう。研究計画書の内容を忘れていると流石にまずいので、それだけ振り返って臨みました。
Zoomに入り、本当に部屋があっているのか不安な時間を過ごすこと数時間後に呼び出されます。いきなり来るので、油断してお手洗いに行っていたりしたらアウトですね。試験官には第一志望の研究室の教授は必ずいると思ってよさそうです。面談時間自体は、人によるようですが筆者の場合は3分程度でした。事前に研究室訪問をしていたから短くなったのだと予想しています。
志望動機や、研究計画の中で一番難しい部分はどこか、など当たり障りのないことを聞かれるので、当たり障りのない回答をすればよいです。
一番難しい部分について「実装だと思います。絶対落ちるので」と答えたのですが質問の意図と違ったようです。正解は「新規性を見出すこと」でした。
結果
アドバイス
- 外部受験をする人は、頼れる人を見つけましょう
- 研究室訪問をしましょう
- 過去問を解きましょう
- 夏は暑いので、猛暑対策は怠らないように
おわりに
色々教えてくれた理情の2人と、院試受けないのになぜか筆者より院試について詳しかった某氏に感謝!