計数工学科(システム)の授業 2Aセメ編
はじめに
計数工学科の学生は進学から半年後に「システムコース」と「数理コース」のどちらかを選び、その後はコースごとに一部異なる授業を受けることになります。
計数の授業についてインターネット上で調べると、数理についてはある程度の情報が得られますが、システムコースの授業に関する情報はあまり見つけられません。
そこで、この記事ではシステムコースの授業を大雑把に解説したいと思います。
(2Aの授業は数理とシステムで共通なためあまり書く必要はないが……)
授業は月から木が駒場、金曜のみ本郷です。
ここにある情報は2023年度のものであり、現在の授業内容とは異なる可能性があります。
時間割
クリックするとその授業の場所に飛べる。| 月曜 | 火曜 | 水曜 | 木曜 | 金曜 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1限 | 生命科学概論 | ||||||||||||
| 2限 | 電磁気学第一 | 統計熱力学 | 計測通論C | 解析力学 | 物理数学 | ||||||||
| 3限 | 最適化手法 |
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量子力学第一 | 数学及力学演習 |
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| 4限 | 数値解析 |
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数学1D |
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各授業紹介
月曜2限 電磁気学第一
前期で習ったような内容を扱う。
内容リスト
- マクスウェル方程式
- 静電磁場
- 時間変化する電磁場
- 電磁場における相対論(簡単)
- 時間発展する電磁場(ダランベルシアン、ポインティングベクトル、遅延・先進ポテンシャルなど)
月曜3限 最適化手法
様々な最適化(x∈Sにおけるf(x)の最大値を求めること)の手法を学ぶ。
以下にある線形計画問題とは、ある行列A, ベクトルb,cに対して、Ax=b, x≧0なる条件の下でcxを最大化する問題のこと。
内容リスト
- ニュートン法
- KKT条件
- 単体法(線形計画問題を解くアルゴリズムの一つ)
- ネットワーク単体法(≒最大フロー)
- 凸二次計画問題(内点法)
月曜4限 数値解析
コンピュータは有限値の計算しかできない為、ある特定の手順を踏むと(もしかすると踏まなくても)精度が急激に落ちる。これを回避する、あるいはこれから逃げられないことを知る方法について学ぶ。
授業資料はこちら
内容リスト
- Ax=bを解く方法(LU分解など)
- 行列の固有値問題
- ニュートン法
- 関数の近似(ラグランジュ補間、スプライン補間など)
- 数値積分(複合台形則、DE公式など)
- 常微分方程式(陽的オイラー法、陰的オイラー法など)
火曜2限 統計熱力学
前半で熱力学、後半で統計力学の初歩を扱う。
毎週課題が出るが、答えが出回っている。
内容リスト
- 熱力学第一、第二法則
- マクスウェルの関係式
- 等温、等圧、等エンタルピー過程など
- ボルツマン分布
- ミクロカノニカル統計(エネルギー⇒状態数⇒エントロピー⇒温度を求める方法)
- カノニカル統計(温度⇒分配関数⇒エネルギー、自由エネルギー⇒エントロピーなどを求める方法)
火曜3限 回路とシステムの基礎
線形システムを題材として、フーリエ変換やラプラス変換など、システム設計をするうえで必須になる知識の導入。
3Sで死ぬほど使うことになる。
内容リスト
- 微分方程式によるシステム解析(変数を電荷Qと置くと、コンデンサの電圧はQ/Cに、抵抗の電圧はQの微分に、コイルの電圧はQの二回微分になる⇒微分方程式にできる)
- 交流回路
- フーリエ変換・ラプラス変換
- フィードバック制御
火曜3限(A2) 物質科学入門
半分雑学のような授業。半導体についての話を聞くときにバンド理論を知らないと足元が不安定な気持ちになるので、取っておくとよいかもしれない。
内容リスト
- 結晶構造(ブラべ格子など)
- 半導体(バンド理論など)
- 物質の色(ローレンツ模型、プラズマ周波数、金属の色など)
- 物質と熱(フォノン(格子振動)など)
火曜4限(A1) 基礎数理
基礎的(難しいという意味)な数理を超スピードで学ぶ。この授業で心が折れる人がいるという噂がある。ただ、システムに進めば3S以降ここまできつい数学は出てこない。数理だと多分出てくる。
最後に出てくる数多の行列標準形は試験に出ない。
内容リスト
- 集合と位相(写像、束など)
- グラフ(Dilworthの定理など)
- 位相(関数の収束、極限、距離空間、閉・開集合、コンパクト)
- 行列(Shur標準形、Sylvester標準形、ジョルダン標準形など)
火曜4限(A2) 認識行動システムの基礎
HCIに関する説明を数回聞いた後グループに分かれ好きなものを作る(割と放置される)。
ArduinoとUnityはそれ以降の研究で結構出てくるので、学んで損はないと思う(研究しようと思った初学者が手を出そうとするのが大体この辺、ということでもある)
内容リスト
- グループワーク、プレゼンテーション
水曜1限 生命科学概論
オムニバス形式で工学から見た生物学について学ぶ。出席してレポートを2回出せば単位が来る。
週で唯一の一限であり取る人は少ないが、面白い回もある(神経の解析など)。
内容リスト
- 認知脳科学
- 心臓の電気生理
- 神経の等価回路による解析
- 生態計測(顕微鏡など)
- コンピュータシミュレーション
- バイオメカニクス(血管の特性など)
水曜2限 計測通論C
前後半に分かれ計測について学ぶ。計数の計を担っている。
前半ではモアレやフーリエ変換を利用した計測の方法について、後半では現実の様々なセンサについて扱う。
内容リスト
- モアレ
- フーリエ変換の利用法(CTなど)
- 様々なセンサ(流速センサ、圧力センサ、熱センサ、加速度センサ……)
水曜3限 量子力学第一
構造化学で扱った内容の復習。
内容リスト
- 波動関数の性質(不確定性関係など)
- 一次元波動方程式の様々な場合(井戸型ポテンシャル、階段ポテンシャルなど)
- 水素原子の波動関数
- 行列力学(ブラ・ケットベクトル、シュレーディンガー・ハイゼンベルク描像など)
水曜4限 数学1D
教養や2Aの他の授業で気が付いたら知っていることにされていた数学を解説してくれる。
内容リスト
- 色々な微分方程式(定数分離法、リッカチ型微分方程式、べき級数展開、ジョルダン標準形などなど)
- 解析力学
- ベクトル解析
木曜2限 解析力学
最小作用の原理(自然現象は作用【(運動E)-(P.E.)】を最小にする方法を取るという経験則)を利用し、オイラーラグランジュ方程式を立てて物理現象を計算する。
授業が進むにつれて体感理解度が下がっていき、第6回辺りで最低値を取る。
なお解析力学は数学1Dでも扱うので逃げ道はない。ただ、試験はそこまで難しくないので悲観する必要もない。
内容リスト
- オイラーラグランジュ方程式
- ネーターの定理
- 相対性理論(全く簡単ではない)
- ハミルトニアン
- 正準変換
木曜3・4限 数学及力学演習
数学1Dと少しの物理学の演習の授業。前半が演習問題の解法発表、後半が小テストを解く時間。 問題は普通に難しい。
内容リスト
- 演習問題の発表(スライドを使用)
- 小テスト
金曜2限 物理数学
物理の授業(電磁気学第一、統計熱力学、量子力学第一)の演習の授業。解法の発表はしなくても問題なかった。
内容リスト
- 演習
おわりに
物理学の授業が多く見えますが、3Sになればほとんどなくなるので心配はいりません。
皆様が学科選択をする際の参考となれば幸いです。